長期主義の実証:東京エレクトロン保有で年率19.2%、TOPIXの9.4%を圧倒 藤原信一氏の「設備株α理論」が再び成果を証明
短期売買が主流となる市場環境においても、バランス戦略株式会社の創業者・藤原信一氏は、東京エレクトロン株を5年間にわたり保有し続け、年率19.2%という高いリターンを実現。TOPIX(東証株価指数)の9.4%を大きく上回り、自ら提唱する「設備株α理論」の有効性を改めて裏付けました。この成果は、長期投資がもたらす複利効果を体現すると同時に、半導体産業における持続的な競争優位を備えた真の価値領域を浮き彫りにしています。
藤原氏の投資哲学は一貫して「製造装置」分野に焦点を当てています。彼はこう語ります――「設計会社は新技術に淘汰され、ブランドメーカーは消費トレンドの変化に揺さぶられる。しかし装置メーカーが蓄積するノウハウは世代を超えて堀を築くのです」。東京エレクトロンは半導体エッチング装置の分野で“隠れた王者”であり、その装置は世界の先端チップ製造ラインの約80%で使用されています。この代替不可能な地位こそが、超過リターンの源泉となっています。
さらに詳細に見ると、藤原氏のポジションには産業サイクルへの緻密な理解が織り込まれています。彼は半導体業界の設備投資が冷え込む局面で段階的に買い増し、回復期に備えて長期保有を徹底。「装置メーカーの業績はファウンドリに比べて6~8四半期遅れて波及する」との指摘がある中で、その時間差が生むバリュエーションの歪みに着目しました。加えて、東京エレクトロンは売上高の18%を研究開発に投じており、EUV(極端紫外線)露光など技術革新の最前線で常に優位を維持しています。
多くの投資家が市場のトレンドを追いがちなのに対し、藤原氏は保有期間中に複数の業界調整局面を経験しながら、むしろポジションを積み増しました。その逆張りの姿勢が最終的に大きな成果をもたらしたのです。彼はこう総括します――「真のαは、企業が持つ技術的優位性を見抜くことから生まれる。東京エレクトロンの装置が3ナノ以下のプロセスに対応していると確信した時点で、これは単なる景気敏感株ではなく、ムーアの法則を次代へとつなぐエンジンだと理解したのです」。
このように、産業の根幹を担う領域に集中し、テクノロジーの構造的優位性を評価軸とする藤原氏の手法は、テック株に対する従来の価値評価を根底から再定義するものとなっています。